DITはワークフローの中で制作スタッフと協力して働く職種である。

 

デジタルでの映画撮影において創造的な結果を生み出すため、ワークフローの設計、基準信号の設定、クオリティの高い画を作る為のイメージ操作を行う。

 

デジタル技術での撮影が広まっていく中で、DITの役割も普及していった。

 

それまでフィルム撮影に慣れていたスタッフの望むルックを達成するためである。

 

DITはそれまでフィルムを管理していたポジションに取って代わり、イメージデータの運搬や管理に責任を持つようになるだろう。

 

 DITは映画撮影の現場で比較的新しいポジションである。このポジションは長く培われたフィルムでの撮影方法から、(HDや2K,4Kのような)様々な形式を利用するデジタル撮影に移行する中で生まれた。

 

色々なシチュエーションにおいてビデオでの撮影はフィルムとは異なることが多い。そのため、DITはスタッフと協力し最良の結果を実現する手助けをするのだ。

その内容は、画の露出のチェック、LUT(Look Up Table)の設定、カメラ設定の確認、メディアの管理にとどまらない。

 

 

 

以下原文

 

 

A digital imaging technician (DIT) works in collaboration with a cinematographer on work flow, systemization, signal integrity and image manipulation to achieve the highest image quality and creative goals of cinematography in the digital realm.

A DIT's role is especially prevalent with the widespread use of digital imaging technology, and to assist cinematographers normally accustomed to film stock in achieving their desired look. They may also be in charge of transferring and managing the image data, replacing the traditional film loader position.

The Digital Imaging (or Image) Technician is a relatively new position on a motion picture set. The position was created as a response to the transition from the long established film medium into digital cinema, which utilizes various formats like HD, 2K, and 4K. Since video reacts much differently than film in many situations, the DIT's job is to work with the cinematographer and help achieve the best results.

This includes but is not limited to: monitoring exposure, setting up "look up tables" (LUTs), set camera settings, and media management.





<< 技術打ち合わせをおこなう >>

撮影に入る前、カメラが決まったあたりで技術打ち合わせをセッティング。

プロデューサー、撮影、録音、記録、編集、合成チームが集まり、ロールNo.やTC、クリップ名の付け方、音のデータ名のつけ方や、合成チームへの素材の渡し方までその場で話し合います。

自分の部署に関係ない話でも、そこでどのような話がされているかを分かっていることで、後で何か変更があったときに各部署間での連携が取りやすくなるからです。

 

 

<< バックアップは複数取り、データには保険をかける >>

マスターデータ1つにつき、バックアップを2つ以上とる。

フィルムとは違い、収録メディアやハードディスクにはなんの保証もありません。

作品が入ると、制作側にバックアップ用のハードディスクを用意してもらいそこにバックアップをとっていきます。

(さらにDIT側でバックアップをとる場合も。)

マスターのデータと合わせると複数の同じ撮影データが存在します。

しかし、データはいつ消えてしまう事態が起こるとも限らないので、データに保険をかけて(IPプロテクト等)万が一の場合にも制作費を補填できるようにしています。

 

 

<< 技術作業ルールの設定とリスト化 >>

データでの映画製作では、撮影時から色々なデータ管理が必要になってきます。

前記した技術打ち合わせで作業ルールのたたき台を提示し、その作品に合うように変更を加えてリスト化。

撮影前に決めたルールも、撮影に入ると状況に合わせてどんどん変わっていきます。

新しいカメラを使ったり、撮影するフレームレートの変更があったり、新しく起こる事態を受けてリストも更新されていきます。

 

(今回取材に協力していただいたピクチャーエレメントさんより、いつも使用している作業ルールのサンプルをいただきました。興味のある方は上のリンクより別ページでご覧ください。)

 

 

<< 現場からポスプロへのリレー >>

撮影現場ではデータやワークフロー管理において、DITがその責任を担っています。

そこからポストプロダクションのプロデューサーへと指揮をリレーしていくことが、仕上げにおいて非常に重要となります。

 

事前の打ち合わせで決まったルールやその後の変更、それらを伝えて繋がる事で仕上げ中に起こりうる事故や不具合などを事前に防ぎ、スムーズな作業を可能にしていきます。


DITと編集部

 

デジタルへの過渡期を迎えている今、編集部としてどのようにDITと連携を取っていけばいいのか、データ撮影の際に編集部が気をつけておくべき点は何だろう。

DITの方からは、カメラの性能を把握しておくことが大切との指摘を受けた。

とはいっても、使用するカメラの全てというわけではなく、そのカメラが撮れる画のサイズを理解しておくべきだとのこと。どのくらいの大きさで撮っているかを知っていれば編集でどこまで寄っていいのかが分かる。

 

編集用に上がってくる素材は、画のサイズや画質が小さく圧縮されているものなので、その素材でトリミングの限界は決められない。2kでは120%、5kでは200%というように、マスターデータによってトリミング可能サイズは異なる。

それから、カメラによっては色々なコーデック(データの種類)で撮影可能なものがある。(RAWデータやQuickTime、XML、MPEGなど)

撮影で使うカメラが、どの仕様のどのタイプで撮影を行っていくかを把握し、編集ソフトとの相性も含め考えていく必要がある。

 

そのため、仕上げにおいても技術打ち合わせが不可欠である。

 

 

 

まとめ

 

データ撮影になってから、編集部においては撮影素材の管理が問題になっていた。

次々に新しいものが出てくる撮影素材の種類や、それに対応する編集機、本編へ渡すデータエラー等。

すべてを一気に解決する方法などないと思っていたのだが、DITという存在がそれを可能にするのではないか。

 

過渡期という混乱の時期の中で、現場とポスプロを繋ぎ、素材を守る。それがDITという存在なのだと思う。

 

編集部はその性質上、撮影素材を管理する立場にいるように思われる。

しかし、マスターデータと【素材】は違うものだ。マスターデータはフィルムでいうところの「ネガフィルム」にあたる。その管理はラボや撮影所が行ってきたし、ネガ編集マンはその素材を管理するといってもその色味や現像、フィルムそのものに責任をとる立場にあったわけではない。

編集部が責任をとるべき【素材】は芝居であり、物自体を指すのではないのではなかっただろうか。

 

ワークフローの見直しに先駆けて、DITという新しいポジションについて考察した。

結果、データ撮影という新しい制作形態に必要な人材であり、それは編集部にとっても例外ではない。

編集協会では、データ撮影におけるスムーズな制作環境を作っていくため、DITという役職の普及も含めたワークフローの作成を進めたい。

 

 

 日本映画・テレビ編集協会 技術委員会